以前、ポートフォリオに対してどれだけ債券を組み入れるかという記事を書きました。
株式だけではなく債券を保有することは
・資産クラスの分散によるリスク低減効果
・運用効率の向上
こんなメリットがあります。
ただ正直なところあまり日本では流行っていないという現状も。
というのも結局いくらかの期間を設定してバックテストをしたとしても、株式のみのリターンはバランス資産を上回る場合が多数だから。
リーマンショックを含んですらそうなるわけで。
それならもう、株式1本でいいんじゃないか。
こう考えてしまうのも無理がない。
しかしそんな常識が覆るような投資信託が発売されました。それが「グローバル3倍3分法ファンド」です。
国内外の複数の資産に対して、通常の3倍のレバレッジをかけて投資をするこの商品。
発売された当初はキワモノ扱いされていましたが、最近になりその優秀な値動きにより人気が高まっています。
この記事では今話題のグローバル3倍3分法ファンドについて
・ファンドの内容や期待リターン
・実際に値動きを見て気づいたことや注意点
を書いていきます。
今現在投資を考える方にとって参考になれば幸いです。
グローバル3倍3分法ファンドの投資先
グローバル3倍3分法ファンドは先物取引を利用することで国内外の債券、株式、 REITに対して通常の3倍の金額を投資するレバレッジ型のバランスファンドです。
リバランスは毎日行われます。
信託報酬は0.44%(税抜)と新たな試みをした商品にしては良心的に見えます。
具体的な比率は以下の通り。
・日本株式・・20%
・先進国株式・・20%
・新興国株式・・20%
・日本 REIT・・20%
・海外先進国 REIT・・20%
・日本国債・・40%
・米国国債・・40%
・ドイツ国債・・40%
・イギリス国債・・40%
・豪州国債・・40%
前述したようにレバレッジ型のバランスファンドなので資産の合計比率は300%になります。
ただしあくまで構成比としては株とREITを合わせても資産の1/3。
レバレッジをかけてはいるけれどディフェンスを意識しているという感じがありますね。
また債券部分に関しては先物運用をしていることにより、為替の影響を受けないと書かれています。
投資先についての雑観
グローバル3倍3分法ファンドの構成比を見たときの印象は
「まあまあいいな…」
これにつきます。ツッコミどころはあるけれどそこまで悪くも思えない。
「新興国債券入ってないじゃん?」みたいな意見もありそうですが、このファンドにはその資産クラスは不要と考えます。
そもそも新興国債券クラスってあまりにも為替変動要素が大きく、他の資産ほどの信頼性がありません。
株のヘッジ役となるかは疑問。
8資産均等バランスに組み入れるにはいいスパイス。ただしレバレッジバランスファンドに組み入れることは不確定要素を更に広げるだけ。
つまるところ、ない方が好ましい。
「REIT要らなくね?」っていう意見もありそうです。
これは本当に難しい。
ただしあくまで個人的な意見なら入ってても面白いんじゃないかなと。REITってどうしてもキワモノ扱いされるんですが
・長期的に見ても株式に劣らないリターン
・株式クラスとのリスク分散としての価値
この2つはやっぱり見過ごせない。
実際のところ2018年は全てのリスク資産が下げましたが、JREITだけは年間パフォーマンスはプラスでした。
今後も商業施設への投資はギャンブル要素が強いものの、オフィスビル事業は堅調な利回りが期待できます。
少し思うのはコモディティや金を入れるとシャープレシオ(運用効率)はどうなるのかなというところ。
今後こういったレバレッジファンドの人気が出ればeMAXISやiFreeさんでも似たようなシリーズが出ると思いますので期待していたりします。
オールシーズンレバレッジバランスなどなど。
期待リターンとリスクについて
それでは実際のところグローバル3倍3分法ファンドはどれだけ儲かるの?という話について。
ファンド作成元の日興証券AM、またその販売をするマネックス証券さんの記事に過去のシミュレーションを元にした表があったので引用をさせて頂きました。
グローバル3倍3分法ファンドのリターンは16.8%でリスクは16%。
レバレッジをかけているのでリターンが高くなることは当たり前なのですが、注目すべきはリスクの低さ。
投資におけるリスクとは”危険”という意味ではなく、その成績のバラつきを示します。
統計的に考えるなら年間の投資成績がこの表にあるリターン±リスクに対して約7割の確率で収まることになります。
よってリスクは低ければ低いほど安定的な運用が可能です。
毎月5万円を20年間積立したとしたら?
では実際にこの運用パフォーマンスが残せるとしたらどれくらいお金は増えるのか。
・毎月の積立額を50,000円
・20年間の運用
という設定で明治安田AMのシミュレーションで計算をしてみました。その結果がこちらです。
投資総額1,200万円に対して評価額は7,222万円(元本割れリスクは0.1%)
ゲームみたいな成績になりました。
まぁあくまで過去のパフォーマンスをもとにしたシミュレーションといえばそれまで。
ただしそれを踏まえても、このリターンとリスクの数字は驚異的です。
・日本株式なら2,695万円(元本割れリスク4%)
・先進国株式なら3,563万円(元本割れリスク1.2%)
・新興国株式なら4,410万円(元本割れリスク1.8%)
リターンの良さはもちろんですが、やはりリスクの低さがポイントですね。高利回りと安全性。普通なら矛盾するはずですが、どちらも取るのが可能ということ。
実際に運用してみてどうなのって話
では実際のところ値動きどうなのって話。
僕は350万円ほどを昨年12月から投資をしています。
「思った以上にリスクヘッジしてくれてるな」というのが正直な感想です。ざっくりというなら
・株価が1%下がったら 0.5%くらい下落して
・株価が1%上がったら0.7%くらい上げるみたいな
そんな感じの値動きです。
また多くの日で8資産均等バランスファンドをアウトパフォームできています。
他の代表的な資産クラスの投資商品とも成績を比較するとこんな感じに。
(3月22日時点に更新しました)
2018年10月からの商品なのでまだまだ日は浅いですが、月次のパフォーマンスも優秀。設定来からの実績では、ついに全てのアセットを追い越しNo.1へとなりました。(2019年3月時点)
リーマンショック級が来たらどれくらい落ちそう?
では最後に。
多分恐らく多くの人が気になっていること。
リーマンショックみたいな金融危機が起きたら、このファンドはどうなるのかについて。
2018年12月の下落時は日経平均やS&P500が10%近い落ち込みを見せる中で-5.5%程で耐えたグローバル3倍3分法ファンド。
ただしあくまでリーマンショックのような危機が起きた場合、このファンドは恐らく株式以上の値下がりになると考えています。
何故なら、あれほどの大規模な金融危機になるとヘッジ役になっていた各国の債券まで下落してしまうから。(※日本国債以外)
よって株式の単一保有より損失は更に広がるかなと。
またREITについても、実体経済が不況になれば株式以上に値下がります。
REITはリスク分散価値はありますがリスクヘッジとしての役割は限定的。矛盾しているようにも聞こえますが事実なので仕方がない。
よって今の所は好調なこのファンドですが、過信は禁物です。
追記。魔法のファンドなんかじゃないよ
想像以上にグローバル3倍3分法ファンドの人気が高まってきましたね。
実際に自分もお小遣いを投資していたらいつの間にか損益が+200万円以上になっていました。
「もうこのファンドに全ツッパでいいんじゃないか」と思うほどの頼もしさ。
ただしあえて言っておきます。
このファンドは別に魔法のファンドでもなんでもないです。
株と一緒に債券まで落ちたらきついです。
グローバル3倍3分法ファンドはざっくりこんな感じで動きます
債券部分は本当は5ヵ国の国債先物運用をしているので厳密には違いますが、シミュレーションをしてみたらそこまで違いはありませんでした。
(設立時の10月は運用がうまく上方乖離と予想)
ということで、何故こんなに今までのパフォーマンスが安定しているかということに対しての答えは
・株が下がったときに債券が上がった
こういった投資においての教科書のような図式がうまく噛み合っていたからです。
もしこのストーリーがその通りにおきない、つまり「株も下がって債券も下がる」状況に陥ったなら素直に株以上に値下がりする。
これだけは覚えておいてください。
ちょうど2019年2月28日はそんなことが起きています。
とはいえ、そういったリスクも踏まえて日興AMさんは5カ国の債券先物を選定して運用をしたり。
今年は利上げもなさそうなので、更なる上昇に投資者としても期待をしています。
ということで少しくどいですがもう1度。
「グローバル3倍3分法ファンドは下落相場でも下がらないという前提での投資は危険。あくまで債券が反発した場合に限る。債券まで下がったら目も当てられない」
これだけは投資をする前に知っておいてください。
まとめ
(スペシャルサイトまでできてました)
グローバル3倍3分法ファンドの特徴、リスクまたリターンについてを簡単にまとめてみました。
2018年10月4日からの運用とまだ日は浅いので断定的な評価をすることは難しいです。ただしポイントとしては
・株式やREITを単体で持つより値動きがマイルド
・下がるときは限定的。上げる時はしっかり上がる
・ただしあくまで債券が機能する相場が前提
こういった点に注意をしておけば良さそうです。特に最後は注意してくださいね。
リーマンショックのような、全ての資産が下落する相場になれば上がるのは日本国債クラスだけ。
一応40/300は国債もこのファンドには含まれますが、到底その値下がりには耐えられません。
260/300の資産は下がるのだから仕方がない。
そう考えると"S&P500:日本国債を1:4で毎日リバランスする5倍レバレッジファンド"なんて出たら買うのにとか思ってしまったり。
まあ無理がありそうですが…。
それにしても久々に面白い商品が出ましたね。
最近はコストの話題ばかりが中心だった投資信託界隈ですが、十分に一石を投じる役目を果たしてくれました。
今後のレバレッジバランスファンドの躍進にも期待しています。