先日友達の会社に公示が出された。
題名は『社内規定の変更について』
内容を見てみるとそこに書いてあったのは
配偶者手当の廃止
何だと!?なに勝手に廃止してるんだ。
彼は憤慨して人事に電話したところ
『君もともと配偶者手当貰ってないやん、共働きだから。子供手当ては増額になるから君の場合は得になる』
といわれたようだ。
そして友達に聞かれた
『配偶者手当ってなに?お前もらってる?』
今までそんなこと気にもしなかった。
共働きの我が家。今月の給与明細をみると
・家族手当欄には扶養する子供2人分の数千円がついていた
・配偶者手当の欄には記載なし。(0円)
配偶者手当って何なんだ?
そして友達の会社は何でそれが廃止になって子供手当が増額されたんだ?
その内容について調べてみた。
尚、今回ぼくが話しているのは「会社から支給される配偶者手当」の話であり、税についての配偶者控除の話ではないことには注意して欲しい。
- 配偶者手当ってそもそも何なの?
- 配偶者手当を廃止する理由とは
- 賃金制度の見直しや手当の増額も
- 配偶者手当の廃止はいつ実施される?
- 配偶者控除や配偶者手当は現在も見直し中
- 給与はどれくらい変わる?トヨタで計算した
- まとめ 世の中にとって本当にいいの?
配偶者手当ってそもそも何なの?
配偶者手当とは企業が従業員に対して支給する手当のひとつ。その従業員の配偶者が専業主婦(主夫)の人に対して支給されるもの
いわゆる「家族手当」の中で配偶者に対して支給される分を指す名称。
給与明細を見ると会社によっては家族手当という名目で、子供の扶養手当と一緒の欄に合算してある場合も。
この手当ては企業の義務ではないので手当て制度が無い会社も存在する。
配偶者手当をもらえる条件は配偶者の給与
(人事院~配偶者手当支給の配偶者の年収条件~)
その支給となる条件は配偶者の収入に制限をかけている場合が多い。
具体的な金額については人事院の『2015年職種別民間給与実態調査』に内容が書かれていた。
配偶者手当がある企業の、配偶者の年収支給基準は
・所得税の扶養のラインとなる103万を基準とする事業所が最も多く40%
・続いて社会保険料の扶養ラインとなる130万を基準とする事業所が15%
ただし中には収入を加味しないという事業所もありその実態はさまざまだ。
配偶者手当の平均はいくらもらえる?
配偶者手当の支給がある企業の割合は65%程。支給額の平均は1万7,400円である。
そのデータが厚生労働省により218社に対して行われた『平成27年賃金事情等総合調査』で公開されていた。
子供手当の支給平均は?
・第1子への支給割合は80%で平均支給額は9,800円
・第2子以降は支給割合は75%程。平均は9,200円。
2子目以降は少し下がる企業の子ども手当。ただし配偶者手当よりも支給割合は高い
配偶者手当とは配偶者が専業主婦(主夫)の人に対して支給される会社からの手当のこと
その条件は配偶者収入に制限をかける場合が多い。平均支給額は17,400円だ
配偶者手当を廃止する理由とは
専業主婦(主夫)のいるサラリーマン家計にとって、年間約20万ほどにもなるそのお金。
何故それを廃止する動きが出ているのか。
それは政府が提唱する「1億総活躍社会」に理由がある。『女性の活躍促進』を目指した流れに現行の配偶者手当制度がそぐなわないから。
配偶者手当があることにより多くの主婦は年間103万円以下の収入で働こうと考える。それが女性の社会進出の妨げになっていると政府は考えたのだ。
配偶者手当をなくすと女性の就労意欲が沸くかどうか。正直なところそれはわからない。
ただし主婦でパートタイマーの人が103万円という金額を意識して働いていることは事実だ。
賃金制度の見直しや手当の増額も
配偶者手当の廃止は労働者にとって悪い話ばかりではない。まず各企業その見直しに当たってはとても慎重だ。
・労使協議の段階から従業員に対して説明会をしたり
・段階的に手当をなくしたり
従業員の納得できる形で進められている。
目的は経費カットの為ではない。また多くの企業は配偶者手当をなくすことで逆に負担は増えている
具体的に言うと配偶者手当てをなくす代わりに
・子供や障害を持つ家族に対しての手当てを増額する
・またその相当部分を基本給等に組入れる
といった企業が多い。
現在の共働き世帯数は約1,100万。専業主婦世帯の約700万を大きく上回る。
このことからも、配偶者手当廃止に対して賛同する意見が増えてきているというのも実情だ。
また急な廃止は家計への影響も与えかねないと勘案し多くの企業では、完全に移行するまで経過措置を講ずるケースも多い。
配偶者手当は女性の社会進出の妨げにも
代わりに子供への手当は増えてきている
配偶者手当の廃止はいつ実施される?
経団連は2017年春季労使交渉で配偶者手当の廃止、削減を会員企業に呼びかけている。
そう遠くない未来、多くの会社でそれが実施されていくことだろう。また大手企業ほどその対応は早くなる。
実は既に配偶者手当廃止に踏み切った企業は多い。
トヨタ自動車はその第一人者
・月1万9,500円の配偶者手当を廃止
・子供に対する家族手当を1人当たり5,000円から2万円へと4倍に増額することにしている。
国家公務員も段階的に変更が進んでいる
現在月に1万3,000円の配偶者手当。平成30年度には6,500円に。子供に対する家族手当は6,500円から1万円まで段階的に増額することを予定している。
配偶者控除や配偶者手当は現在も見直し中
2016年10月には、企業規模が大きいパート労働者の社会保険料が免除される被扶養枠が、これまでの130万円未満から106万円未満に引き下げられる。
この流れから今後は配偶者控除そのものに対しての改正も予定されているのでますます配偶者手当を廃止する企業は増えてくる。
実際に2015年の職種別民間給与実態調査によると民間事業所全体の69%ほどが配偶者手当を支給しているが5年前と比較して4%程ダウンしている。
だんだんと配偶者手当は減少傾向にあるのだ。
配偶者手当廃止は多くの企業が取入予定
トヨタ自動車、また国家公務員は段階的に配偶者手当廃止の試みをしている
配偶者手当の廃止は労働条件の不利益の変更とはならないのか
配偶者手当の廃止は労使間において変更の合意がとれる可能性が高い。その場合については労働条件の不利益の変更とはならない。
配偶者手当廃止のみを一方的に行うのであれば、合理性がない給与体系の変更をしたとみなされる。
労働契約法の10条の違反となり、また当然労使間においての同意も得られない。
ただし、今回のケースについては配偶者手当を廃止する代わりに、
・子供手当て
・介護手当て
に切り替えをするといった方法をとる。人件費削減の為の賃金カットではないということが明らかであり同意が得られる可能性は高い。
逆に言い換えれば、勤め先の企業で反対意見が多数を占めれば配偶者手当は廃止とならない。
たとえば三菱自動車。
配偶者手当を従業員の3割強が受給していることから会社の都合で無理には変えられないと人事担当者も答えており当面の変更はなさそうである。
配偶者手当廃止は労使間で合意が取れれば違法なことではない
給与はどれくらい変わる?トヨタで計算した
本当に企業は障害年収の総額としても労働者に対してのコストカットを行っていないのだろうか。
気になったのでそれをいち早くそれを導入したトヨタについて共働き世帯、専業主婦(夫)世帯それぞれの条件ごとに調べてみた。
それぞれの結婚する年齢や子供についての仮定は以下の通り。
・結婚する年齢は30歳。
(厚生労働省データ2015年 平均初婚年齢 男31.1歳 女29.4歳)より
・労働者本人は定年(60歳)まで勤める
・配偶者や子供は人数の変化はなし
・子供2人は労働者本人の定年(60歳)になるまでに18歳を迎える。
(平均出産年齢1子目30.6歳、2子目32.3歳より妥当な条件)
計算をしてみた結果
(トヨタ自動車社員の配偶者手当有無での比較)
『特に企業にとって有利じゃない。むしろ労働者優位?』
というのが正直な結論。
ケースごとの例としては
・専業主婦世帯は今までの方がお得。子供が2人いても配偶者手当の方が大きい。
・共働き世帯は今の方がお得。子供が1人でも配偶者手当はないほうがお得。
子供が2人になれば共働き世帯は200万以上の収入が増える。
そして最近は配偶者の扶養に入らずに共働きする家庭が多いことからも時代の流れにそった対応といえるだろう。
配偶者手当廃止により共働き世帯は生涯の収入が増加
配偶者手当廃止は企業に金銭面で不利というわけではない
まとめ 世の中にとって本当にいいの?
自分はうれしい。この制度改革。
もともと配偶者手当なんてもらっていなかった。10月には2子目も産まれるから子供手当てが増額されるとしたらその分丸儲け。
いやなことなんてひとつも無い。
ただ、今の世の中にとっていいかどうかを考えてみると分からない。
恐らく政府は配偶者手当を企業が廃止することで
・今まで103万までに就労をセーブしていた女性の就労を促す
それと同時に
・子供手当ての増額によって子供を作る人も増えるだろう
なんて考えてるいるだろう。
しかしどうだろう
ただ1つ言えるのは、自分の周りには配偶者手当がいい口実となり結婚したカップルが多かった。
結婚しといた方がいろいろ得になるからと。
それが廃止になってしまえば
『結婚しただけじゃ家族手当を貰えないならまだ結婚する必要なくない?』
と考えて結婚をあせらない人も増えそうな気がする。
結婚を決意するのっていかにその合理的な理由付けを見出せるかみたいなところもあるので。
以上なかなか難しい配偶者手当廃止についてでした。