すっかりもう忘れていたよこの騒動を。
製造業の倒産としては過去最大規模となるタカタの民事再生手続きの開始受理。
あれからもう1ヶ月以上がたった。
負債総額は取引先である自動車メーカーが肩代わりしたリコール費用も含めると1兆円を超えるとも言われていて。
株はすっかり投機家のオモチャにされ最後はゴミ同然の値で上場廃止に。
同じくして経営手腕の無さを攻められた東芝のように時折話題にも上がるわけでもなく、すっかりその会社名についてを聞かなくなった。
今思えば僕はタカタの一連のエアバッグリコール問題から破綻に至るまで、そして現状についてを何も知らない。
知っている事は同社が製造したエアバッグが爆破して何人もの死傷者がでたこと、そしてそれらの危険性を知りながら隠蔽をしていたタカタの幹部の不誠実さくらいだろうか。
少し気になった僕はそれらについて、またタカタの抱えるその50,000人とも言われる従業員のいく末について調べてみることにした。
エアバッグリコール問題発覚から破綻までの経緯
以下時系列にそってタカタのエアバッグリコール問題についてを記していく。
ちなみにタカタはエアバッグやシートベルトなどの事故後の被害を軽減するパッシブの安全システムにおいては世界2位のシェアをこれまでは誇っていて、昨年の連結売上高についても7,000億円を超える巨大企業である。
2000年ごろより:硝酸アンモニウムを採用した不具合のあるエアバッグが製造され始める
200?年:エアバッグ作動時に異常な破裂がおきて金属片が飛び散る報告がされる。社内での秘密裏での試験によりその兆候を見つけたがタカタ幹部がこれを隠蔽
2008年:アメリカでタカタ製エアバッグが暴発、ホンダがリコール
2009年:タカタ製エアバッグによる初の死亡事故が発生する
2014年:世界各地で事故が多発、トヨタ・ホンダなどでリコールが相次ぐ
・NYタイムズがタカタ・ホンダがエアバッグの欠陥を隠蔽していたと報道。他数社を含めて相手取った損害賠償を求める集団訴訟が起きる。
・公聴会に呼ばれたタカタの品質担当管理者はエアバッグに対する異常をみとめて被害者への謝罪をするものの隠蔽については否定。また『原因は特定されていない』とした。(このときタカタのCEOが表舞台に顔を出さなかったことに対して不信感と非難が相次いだ)
2015年:米国でまた死亡事故が発生
・タカタが全面的にエアバッグの欠陥を認め3,400万台ほどのリコールを行うことに合意した。
・蜜月関係にあったホンダがタカタ製エアバッグを今後一切使わないことを米国で発表した。
2016年:ホンダが世界で2,000万個を超えるエアバッグの追加リコールを行った。(リコール対象は1億個を超えその費用は1兆円ともいわれる)
2017年:タカタ元幹部が製品の欠陥の隠蔽についての詐欺罪で刑事訴追されタカタ側は詐欺罪を認め和解金として10億ドル(1,150億円)しはらうことで合意
・タカタは6月に民事再生法の適用を東京地裁に申請。。
タカタ製エアバッグの何が問題だったのか
一言で言ってしまえば
『ガス発生剤として高温多湿環境に弱い硝酸アンモニウムを使用していたにも関わらず、乾燥剤を全ての製品にいれなかったこと』
とのことらしいがなるほど意味が分からないのでエアバッグの原理からを調べてみた。
まずエアバッグが膨らむまでについては以下の3つの手順が0.1秒もない間に行われているようだ。
①自動車の衝突をセンサーで感知
②車載コンピューターの命令でインフレーター(ガス発生装置)が着火
③インフレーター着火に伴い化学反応でガスが発生してエアバッグが膨らむ
そしてこの③においてのガスを発生させるための火薬として2000年まではアジ化ナトリウムがつかわれていたのだが、毒性が強い為禁止となった。
その代替品として候補であげられたのが硝酸アンモニウムと硝酸グアニジン
硝酸アンモニウムはガス発生剤としての爆発力は優れているが不安定であることから他メーカーが硝酸グアニジンを使用した。
それに対してタカタは硝酸アンモニウムと硝酸カリウムを混ぜた、『相安定化硝酸アンモニウム』を開発。そしてこれはガス化率が高くた炭酸ガスを発生しないことより環境にも良いと当初はタカタはその技術を高く評価されていた。
ただし火薬成分である硝酸アンモニウムには高温多湿下の環境で長期間使用されると経年劣化が生じるという脆弱性があり破裂する可能性を含んでいたとのこと。
またそれを防ぐための乾燥材が全ての製品に入っていなかったことも原因だったようだ。
今後のタカタはどうなっていくのか
今後タカタは中国の寧波均勝電子傘下の米自動車部品メーカーであるKSS社に約1,750億円で全ての事業(相安定化硝酸アンモニウムを使用したエアバッグインフレーターの事業を除く)を譲渡することになる。
そしてその支援の下で 民事再生手続きを利用し、中国企業の傘下として事業再建を目指していくとのこと。
タカタの株はどうなる?
上場廃止後については株式市場での売買はできなくなる。売却を希望する譲渡人と買受を希望する譲受人との間で売買する相対取引のみが可能であるが、まぁ買う人などいないことが予想できるので実質紙切れ同然ではないだろうか。
タカタの発行した社債はどうなる?
タカタは計300億円相当の社債を発行しているが日本格付研究所はその社債についての格付けをCからD(債務不履行)へと格下げをした。
各証券アナリストの見方としてはその社債回収率についてを10~20%程度の可能性があるとしている。
今後タカタの従業員はどうなるのか
これが自分としては一番心配していた事だったのだがタカタの現社員さんたちがこの一連の出来事により路頭に迷うということは特にはなさそうだ。
KSSはタカタの全ての従業員に対して、現在と同等の条件で受け入れることを計画していると、タカタとKSS社との間の事業譲渡に係る基本合意についての中で通知がされていた。
またタカタとKSSの事業を実質的にすべて統合することで、世界23カ国に展開し約60,000名の従業員を擁する世界最大級の自動車安全部品会社が誕生することとなる。
ちなみにタカタの従業員の平均年収は・・
タカタの平均年収を有価報告書のデータよりひも解いてみると
30歳で512万
35歳で588万
40歳で666万
45歳で744万
50歳で806万
55歳で801万
生涯年収は2億4506万3414円
上場企業の平均生涯賃金は2億1785万円といわれているので一般的な上場企業の中においては比較的高い位置にいるといえるだろう。
うらやましい・・・(・ω・)
まとめてみておもったこと
大まかについてをできるだけ簡単にまとめてみたのけれど、専門的な用語も多くてもし間違っているところなどがあれば教えていただけると助かります。
なんというか時系列で書いていて思ったのは、謝罪することや過ちを認めることの難しさ。
もっと早くその過失ついてを謝罪して然るべき対処をとっていれば、タカタはタカタとして生き残る可能性の道はあったかもしれない。
そして何よりその欠陥エアバッグの破裂による犠牲者を減らすことができたのは間違いないように思う。
2010年くらいだったかな。新型プリウスのリコール騒ぎの時。アメリカの議会でトヨタの社長さんが直々に頭を下げた。
このことに対して中にはそれをみじめだという人もいたけれど、企業のトップが問題が起きた時にすぐに謝罪をするという姿勢、あれこそ企業また、僕も人間として見習うべきことなのかなぁと今になると思ったりする。
まぁ僕はいつも会社でも家でも謝ってばっかりなんだけれど。
そしてもう1つ。タカタの従業員については今後も雇用されるという事を知って安心したのだけれどその下請け企業さんたちについてはどうなるのだろう。
帝国データバンクの調べではタカタグループの下請企業は合計で、全国で571社(一次下請先141社、二次下請先430社)がありこれら総従業員数は6万人ほどいるとのこと。
タカタの事業を引き継ぐことになるKSS社は中国の寧波均勝電子の傘下にある。原料についてがこれまでの国内調達から中国の企業からの調達に変更とはならないのだろうか。
いつだって割を食うのは中小会社。なんとかその機動力や専門性を生かして、この波に負けないで欲しいなぁ。