この記事は一部追記・編集をしています
『私は楽天全米株式インデックスファンドを解約した方がいいんでしょうか?』
普段ならそれらのメール。僕は返答をすることはない
責任が取れないということもあるけれど、まず僕には相場観がないのだ。未来の予測もできないし。
だからこそのインデックス投資である。
過去は未来を保証しない。けれど世界は今後も右肩上がりに成長をする。
僕はそれを信じている。
しかし今回の彼女の質問。その類ではなかった。
彼女がネットで評判がいいからと聞いて購入をした
『楽天全米株式インデックスファンド』
それが1ヶ月たった今、そのベンチマークとなる指標から大きく下方乖離しているという事実。それにどう対応したらいいかという相談。
どうやらたわら男爵さんのこの記事を見たようだ。
米国ETFからの下振れは、楽天全世界株は3.6%、楽天全米株は2.4%(訂正可能性あり) - 40代でアーリーリタイアしたおっさんが たわら先進国株でベンツを買うブログ
全くとても難しい話である。
ただしこの疑問。
自分も以前より気になっていた、いわゆる『投資信託の実質コスト』の話へとつながる。
彼女のためというわけでなくそれを調べてみることに
- 信託報酬が安いことはリターンの良さを保証しない
- 投資信託のコストは一般的には3つだけ
- 投資信託がリアルにかかった経費。それが『実質コスト』
- 資産が増えたほうが理論的には実質コストは下がるはずなんだが
- 2017年新規設定eMAXISslimと従来のeMAXISシリーズ。どちらの方がパフォーマンスは優れていたか
- 必ずしも新規ファンドは実質コストが高いとはいえない。でも様子を少し見る方がいいのかな
信託報酬が安いことはリターンの良さを保証しない
まずはその実例から。
僕は現在、確定拠出年金(iDeCo)で三井住友・DC外国リートインデックスという投資信託を購入している。
上の記事でも書いているが先進国REITの資産クラスで 同じベンチマークの低コスト投資信託は他にもニッセイ、iFree、たわらが販売。その数は4つほど。
僕が積み立てしている三井住友。
その4つの中でコストはニッセイに次ぐ2番目だ。だから当然2番目にそのリターンは高くなるはず。
しかし直近1年でのそのリターンを比較したとき、三井住友のリターンは4番目。つまり最悪の成績だったのだ。
その理由としてあげられるのが、実質コストである
投資信託のコストは一般的には3つだけ
投資信託には一般的に3つの経費がかかると言われる。
・購入する時に1度だけ支払う販売手数料
・運用期間中に毎日ひかれている信託報酬
・解約するときにかかる信託財産留保額
販売手数料については無料、いわゆるノーロードの商品が昨今は増えてきた。ただし信託財産留保額については以前僕が紹介したジェイリバイブはまだそれを経費としてとっている。
そしてインデックスファンドのシリーズとして人気の高い従来のeMAXISインデックスファンド。
これも一部(新興国株式、バランス)はそれがかかる。
今年になり三菱UFJ国際投信がeMAXISslimという信託報酬の低い商品を出したとき、はじめてその手数料を認識する人も多くいた。
意外と忘れてしまいがちな経費なのである。
それは同ファンド保有者を数多く失望させた。(NISA口座運用ですぐに解約しにくかったりするようだ)
しかしやっぱりそれは見るべきところに表記されているわけで。また何より、買う前から分かる情報である。
今からいう実質コストに比べれば全く良心的だ。実質コストはその運用期間を終えてからわかる費用なんだから
投資信託がリアルにかかった経費。それが『実質コスト』
そして本題。投資信託の運用コストは信託報酬だけではない。その他の費用として売買委託手数料、有価証券取引剤、保管費用や監査費用などが『隠れたコスト』として存在している。
信託報酬と隠れたコストを足した『実質コスト』
それが優れていないと実際に運用として優れたパフォーマンスは残すことができないのだ。
では何を見ればいいのか。運用報告書である。
設定日が2013年の9月とある程度の歴史をもつ
・i-mizuho米国株式インデックス(信託報酬0.57%)
で確認してみる。
緑の枠は信託報酬で0.572%と書かれている。公表されているその信託報酬の数字は0.57%。ほとんど変わらない。
青の枠その他の費用であり0.062%と書かれている。
内訳としては以下の通り。
・売買委託手数料が0.002%
・有価証券取引税が0.001%
・保管費用が0.005%
・監査費用が0.051%
・その他が0.003%
信託報酬0.572%とその他の経費0.062%
それを足した数字が0.634%。
これがi-mizuho米国株式インデックスの第4期の実質コストとなる。
資産が増えたほうが理論的には実質コストは下がるはずなんだが
どうしたら実質コストを下げることができるのか。
間違いなくいえることは、保管費用と監査費用
その2つについては純資産額が増えるからといって比例して増加はしていかないはずだ。
総資産における比率は低くなっていくと予想できた。
よって純資産額が増えれば実質コストは落ちるだろう
そう思って僕は先に調べたi-mizuho米国株式インデックスの前期である第3期の運用報告書と第4期(今期)の運用報告書を見比べてみることに
何故かあがっている実質コスト( ´_ゝ`)
・第3期の投資信託財産総額は13億4千万円ほど
・第4期の投資信託財産総額は19億2千万円ほど
1年で5億8千万円もその預かり資産は増えたわけだから実質コストは下がるべき。しかし結果として0.024%上昇している。
理由が僕ではわからない。
2017年新規設定eMAXISslimと従来のeMAXISシリーズ。どちらの方がパフォーマンスは優れていたか
(図はeMAXISslimより)
もっとサンプルを増やしたいと考えた僕。
2017年は僕が投資をはじめたiFreeシリーズをはじめ多くの投資信託が新規設定された。
その中でやはり一番今年の話題となったのは、そんな信託報酬引き下げ争いの火付け元であるeMAXISSlim。
僕はそれについて、従来からのeMAXISシリーズのインデックスファンドと成績を比較してみることにした。
対象としたのは
・eMAXIS slim国内株式
・eMAXIS slim先進国株式
・eMAXIS slim新興国株式
・eMAXIS slim国内債券
・eMAXIS slim先進国債券
・eMAXIS slimバランス8資産均等
以上6つのインデックスファンド。
同じベンチマークを持つもの同士で、かつ対象のslimの設定日に合わせてeMAXISの基準価額を10,000にしたらという仮定での計算をした。
また対象期間はslimが発売された2017年2月27日より10月31日まで(但し8資産は2017年5月9日より、新興国株式は7月31日より)
結果はこうなった。
日本株式・・1ヶ月目からslimの方がリターンが高い
先進国株式・・1ヶ月目からslimの方がリターンが高い
新興国株式・・1ヶ月目からslimの方がリターンが高い
日本債券・・1ヶ月目からのslimの方がリターンが高い
先進国債券・・1ヶ月目からslimの方がリターンが高い
バランス・・1ヶ月目からslimの方がリターンが高い
見て分かる通りeMAXISに関してはそのすべての資産クラスにおいて信託報酬の安いslimの方が成績は上回ったという結果になる。
やはり信託報酬が低いということは間違いなくそのリターンに対してのメリットにはなり得るのだ。たとえそれが新規設定であったとしても。
必ずしも新規ファンドは実質コストが高いとはいえない。でも様子を少し見る方がいいのかな
以上より新規設定ファンドが必ずしも
・その実質コストが高くなり
・結果としてパフォーマンスが悪くなる
というわけではないということが分かった。
悲しいことに新規設定ファンドはまずその実質コストを多くの人が調べる運命にある。悪い結果が出た場合は間違いなくフォーカスされる。
それによって
『新規設定ファンド=実質コスト高い』
といった図式が産まれたのかもしれない。
ただし結果としてではあるが
・楽天全米株式インデックスファンド
・楽天全世界株式インデックスファンド
以上2つの投資信託については、その投資対象となるバンガード社のETF(VTIとVT)よりパフォーマンスは悪い方向に大きく乖離した。
それだけは事実なのだ。
そして、以前にもこういった事はあった。先に僕があげたiFreeシリーズの中での『iFree新興国株式インデックス』
これも第1期決算でその下方乖離が話題となった。
やはり関係性がまるでないとはいえないのだ。
また上でも考察したように
・新規設定の投資信託はそのファンドへの新規流入資金が純資産総額と比較して最も割合的に多くなる
・監査費用や保管費用の運用経費については資産が増えても比例して増加しないだろう
ということを考えると。
『純資産総額が大きいほど、結果として実質コストは低くなりリターンをうみやすくなる』
その意見は理論だっているし間違いではないはずだ。
ではどうすべきか?信託報酬が低い商品が出た時
・今保有している商品から入れ替え、また買い付けの変更をするべきなのか
・ある程度の期間待つべきなのか。
やっぱりそれが僕にはもう分からない。
結局のところ彼女に対して行きつく答え。それは
『投資は自分の頭で考えて、自分でそれを後悔しよう』
以上である。
まあ僕に投資の質問をする事から間違ってるんだけどな( ´_ゝ`)