街コンで出会って、いつものお店でディナーを一緒に。放映中のアニメの話をしていたはずがどんどんディープな方向に向かっていく。
・応援している作品が出れば何冊も買ってしまう
・まどマギの映画のオマケを集めたくて、何回も映画に行ったんだけど全く飽きなかった
これはもしかして…はじめて会うオタク女子?
気になってカマをかけてみる。
「同人誌とか買ったりする人?」
…少しの沈黙。
耳まで赤くしてコクリとうなづく彼女。アニメの世界から出てきたみたいなベタな恥ずかしがり方に笑ってしまう。
「そんなことはじめて2人で会って聞く?」
ちょっと怒りながらも内心は楽しそう。そして今度はその魅力について説明をし始めた。クールビューティーな印象はどんどん崩れる。
時計はもう23時を回るのに、まだまだ彼女は話し足りない様子。帰ることを忘れているようにも見えるほど。
僕は話しながら全く別の事を考えはじめる。
24時03分。名鉄の終電は意外と早い。
この調子で話していけばすぐに時間は経つだろう。そうなったら後はもうなんとでもなる。
そんな邪な考えだった。
女社会で生きてきた彼女
(僕の街コン攻略法はこの記事に)
すぐにその時間はやってきて、いつのまにかお店には僕と彼女しか残っていない。
閉店は24時30分。
店員が後片付けをする様子をみて彼女はやっと時間に気付く。
僕らはカラオケに行くことに。
「こういう事は慣れているの?」
彼女が少し疑うように僕に話す。
「慣れてるように見える?慣れてたらもう少しうまくやるんだけど。こんなところじゃなくて」
そう答える。少し安心した様子。
カラオケでは歌なんて1曲も歌わなくて、すっかり酔っ払った彼女の話をただ僕はきいていた。
・ずっと女子校で男性と自然に関わることがなかった
・一度も男を好きになったことがなくて、自分はそういう人なのか悩んだ事もある。
・合コンで出会った人に告白されて一度付き合ってみた。でも手を繋ぎたくないと思って逃げてしまった
・もう二次元だけで生きていこうかな
・でもやっぱり彼氏は欲しいと思ってしまう
そんな過去の経験や悩みだった。
朝を迎えて
朝になる頃、すっかり僕らは仲良くなった。"凸凹がうまくはまった"とでも表現すればいいだろうか。二人ともお互いに付き合うことは必然のように思っていた。
・アニメイトに行く日
・彼女の部屋でお気に入り作品を全部見る約束
そんなこれからについて話し合った。手を繋いで駅まで送り別れ際にはキスをした。
オタク女子との恋愛は楽しかった
こういったタイプの子と付き合うのは初めてだった。
男友達と話すような感覚。でも女の子。ツンとした顔をしてるのに実はめちゃくちゃ"甘えたがり"
男なら楽しいに決まってる。
家デートが中心で、時折おでかけ
その頃はちょうど進撃の巨人が流行っていて。彼女の家ではよくアニメの鑑賞会をした。
ソードアートオンライン以降アニメからは遠ざかっていた自分。久しぶりに見るそれは刺激的で、子供の頃に親に隠れて息を殺しながらそれを見た時のようなドキドキ感を思い出させてくれた。
彼女は原作を読んでいるからこの先が分かっている。でも絶対にネタバレをすることはしなかった。アニメでは省かれてしまうような小ネタ。それを要所要所で教えてくれた。
僕は少しだけ大袈裟にリアクションを取るようにしていた。その時の得意げな彼女の顔が好きだったからだ。
僕らはバランスが取れていた
・話をきくことが好きな自分
・好きなものを話すと止まらない彼女
全く正反対な性格だったけれどなぜか僕らは喧嘩もなくうまくいった。彼女は僕にアニメの円盤をいっぱい貸してくれた。けれど僕は結局あまりそれを見なかった。
彼女はそれでもいいみたいだった。
独自の価値観あるいは世界観を持っている。でもそれを無理やり押し付けない。僕は彼女のそんな所が好きだった。
僕がゲームをやる横でBL本を読むことも多かった(何故か三角座りw)。少し異常な情景。でもゲームでミスるとすかさずツッコミを入れてきた。
お互いが別のことをしているのにそれが自然。優しくて柔らかな時間だった。
彼女はオムライスが好きだったから僕は毎回それをどうやって作るか趣向を凝らした。トマトソース、デミグラスetc…。ふわふわのオムライス。
「見た目はプレーン。でもナイフを入れるとふわふわなのが食べたい」と言われたことがあった。
けれどそれは難しくて僕は最後まで作れなかった
それでも彼女は全部おいしいと言ってくれた。
先は見えなかった
いつの間にか付き合ってから1年以上が経った。相変わらずの関係。ただし確実に僕らは歳をとっていて。周りにはチラホラと結婚する人も出はじめた。
僕は彼女のことがとても好きだった。
意地っ張りだけれど気にしいな性格やお酒を呑むといつも同じアニメの話をしてくるオヤジっぽいところとか。その全部が愛くるしかった。
でもその反面で僕の中の理性が、彼女に拒否反応を示すことは良くあった。主に2つのことからだ。
欲しいものが多くて我慢がきかない
(1回も着ない服とか)
欲しいアニメグッズがあると何がなんでも手に入れないと気が済まない。正規ルートで手に入らなければ転売価格でも絶対に買う。
彼女はそんな人だった。
初めは笑って見ていた。でも段々と怖くなってきた。この子と生計を共にしたら…。そんな風に考えると。
・彼女は常に刹那に生きている。
・僕は20代のくせに老後を心配する人間
そういう意味では僕らは真反対の性格なのだ。
ただし矛盾しているが僕はそういう彼女が好きだった。そして欲しいものを手に入れた時の彼女の顔。それを見るだけで嬉しくなれたしその笑顔を守っていたかった。
欲しいものを我慢させることは彼女の人間性を殺してしまうような怖さもあった。
頭の中心にある次元が違うから
僕の中でのアニメや漫画。それはあくまで興味のあるジャンルの一つにしか過ぎなかった。仕事の人間関係や最近話題のドラマ。そんな日常的に話したい事もいくつもある。
彼女の場合はそれが違った。
とにもかくにも自分の中心がオタク活動にあった。そこからリアルの音楽や旅行に枝が伸びる事はあってもあくまで幹となるのは二次元だった。
どうしても話していると前提から狂ってくる。僕は3次元の自分を楽しみたいと考えていたけれど彼女は2次元に全てを委ねていた。3次元はあくまでその活動のための準備でしかなく承認欲求もなく成長も求めていなかった。
言葉通り生きる次元が違うのだ。
彼女は僕にそうなることを求めなかったがどうしても僕はそれが苦しくなった。
別れるのは少し大変だった
怒らない人=優しい人ではなく、怒らない人=他人に期待も興味もない人である場合が多い。怒らない人との付き合い方は難しい。怒る人は怒るというステップを踏んで反省の機会を与えてくれるが、怒らない人は反省の機会すら与えてくれない。知らないうちに諦められてる。知らないうちに君の元を去る。
— Testosterone (@badassceo) 2018年6月7日
(まさに自分)
このまま一緒にいても未来が見えない。僕は彼女に一方的に別れを告げて一切の連絡を絶った。
彼女は何度でも連絡してきた。半年以上もそれが続いたのははじめてだった。
「私の何がダメなの?どんなところでも直すから。」
「もう一度だけでいいから会いたい」
僕はそれらを全部無視した。
街コンに一緒に行った友達にも連絡がいっていた。それでも無視をし続けた。
僕は人に文句をつけたり直したりして欲しいということができない人間だ。これは何も異性に限らない。仕事上でも同じこと。
自分の思いと違うことを相手がしても甘んじて受け入れる。今後付き合う相手を変えればいいという感覚。
冷たくみえるが、いろんなことを経験してこのスタイルが僕の身に染み付いてしまっていた。今更それを変えれなかった。
そしてやっぱり、彼女の個性を否定して自分のエゴに当てはめてしまうこと。それは間違いだとも考えていた。
幸せになってるとええな
いつの間にか彼女からの連絡は来なくなった。
あれから数年が経つ。アニメを観ているとたまに当時のことを思い出す。懐かしく思う反面、もう少し方法があったのかなと後悔をしたりもする。
僕は君を幸せにできなかった。
でもそれは君が悪いとかじゃなくて、僕に問題があっただけ。
君はとても魅力的で、今後何人もの男性が君だけに夢中になる。そしてその中には君が好きになるような人もきっと出てくる。
・好きなアニメを一緒に見て
・コミケについて来てくれて
・君を第一番に考えてくれる人
そんな魅力が君にはある。まだ出会っていないだけで。
だから趣味を辞める必要なんて全くないんだ。
別れる時に、そんな言葉を1つでもかけてあげれば良かった。あの頃は自分の事しか見えていなかった。
どうか僕を許して欲しい。
今の君はまだオタク女子でいるんだろうか。
そういえば僕は前よりずっと料理が上手になったんだ。
君が食べたかったあれもできるようになったんだ。"見た目はプレーン、でもナイフを入れるとふわふわなオムライス"
追記
オタク女子と出会いたいというコメントをいくつかいただきました。なかなか自分からいけない人は街コンよりもハピメのほうが内面からアプローチできると思います。
