以前こちらの記事で消費税の中間申告についてまとめたので、法人税の中間申告についてもまとめておきます。
申告書作成ではなくて、一般的な経理として覚えておきたい実務処理の部分です。
消費税とは違い、法人税の中間納付は売上金額に関わらず年に1回固定です。金額は予定納税であれば前期の半分です。
あまり難しくないからこそきちんと仕訳レベルまで整理をしておきます。
ざっくりいうとこの記事では
・法人税の中間申告のルール
・法人税の中間申告をした際の仕訳
について書いていきます。
またどうせならということで、最終的な確定申告についてまでも調べました
- 法人税の中間申告とは
- 中間申告をしないといけない人は
- 中間申告の法人税納付期限はいつまで?
- 法人税の中間申告の金額はあらかじめ分かる
- 仮決算に基づく中間申告もできる
- 法人税の仕訳処理:中間申告から決算まで
- まとめ
法人税の中間申告とは
法人税の中間申告とは前期に納めた法人税の納税額を基準に、その半分を事業年度の真ん中で納税するというものです。
消費税の中間申告とは異なり、売上また所得額に関わらず中間申告の回数は1回です。
一般的には前期の半分を予定納税という形がとられますが、仮決算に基づいて申告をする方法もあります。
中間申告をしないといけない人は
法人税の中間申告をしないかいけないかどうかは、前事業年度の法人税額が20万円を超えるかどうかで判断します。
具体的には前事業年度の法人税確定申告書の⑬差引所得に対する法人税額を見ます。その金額が20万円を超えていれば中間申告をする必要があります。
・【⑬差引所得に関する法人税額】は国税分の法人税
・【40 差引地方法人税額】は地方法人税になります。
見るべきは国税分の法人税です。
地方法人税は法人税計算の中での【④差引法人税額】また【34 課税標準法人税額】に4.4%を乗じた数字です。
国税の部分の金額で判断やな
納付書にも分けて書いてあるね
法人税の中間申告が不要な法人は?
前年の法人税の納税額が20万円以下である法人は中間申告は不要です。
また法人税がもともと課税されない団体も中間申告は不要です。具体的には社団法人や財団法人、宗教法人などがあげられます。
中間申告の法人税納付期限はいつまで?
法人税を納付する期限は事業年度開始の日以降6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内となります。
法人税の中間申告の期限
(例)8月末決算なら4月30日まで
各都道府県に納付をする事業税や住民税に関しても納付期限は同じとなります。
住民税と事業税も同じタイミングで中間申告
法人税の中間申告をする際は、事業税と道府県民税と市町村民税も中間申告をして各都道府県に支払をする必要があります。
またその場合、予定納税か仮決算による納税形式をとるかは法人税の中間申告に合わせることとなり自由に選ぶことはできません。
事業税はその法人の所得に対して課税される「所得割」が中心となる税金です。
資本金が1億円を超える法人の場合(期末日時点)は、付加価値を課税標準とする「付加価値割」、資本等の金額を課税標準とする「資本割」の2つから構成される「外形標準課税」が課されます。
道府県民税と市町村民税は、法人税額に対して自治体ごとに決められた住民税率を乗じた「法人税割」と、法人税に連動しないで資本金や従業員数に応じて課税される「均等割」の2つから構成されます。
前年実績に応じて税務署から通知書類が来る
次に実務処理について
・法人税は前年の実績納付税額に応じて税務署から「税額が記載された中間申告書と納付書」が送付されてきます。
・事業税と住民税は各都道府県から「税額が記載された予定申告書」が送付されてきます。
どちらも銀行で支払をすれば終わりです。
ただし事業税と住民税は都道府県によっては納付金額が書かれていない場合があるのでその場合は自分で計算をする必要があります。
またどちらについても書かれている税額は予定納税での金額となります。つまり前期納付実績の約半分です。
今期の営業成績が著しく悪い場合などの場合は仮決算による納税をすることも可能です。
法人税は予定納税、消費税は仮決算による納税という形式もOKです。
法人税の中間申告の金額はあらかじめ分かる
法人税の中間申告の金額は、前年度の法人税納付金額の約半分となります。
ただし少し計算方法が特殊です。
前年度の納付額をそのまま半分にするのではなく、12で割ったあとに6を乗じる。そして100円未満を切捨てします。
法人税の中間申告の計算方法
(昨年の納税額)÷12×6 (100円未満は切り捨て)
例えば法人税が2億円の場合、この計算式に当てはめると1億ではなく99,999,900円となります。
ただし住民税と事業税については、それぞれの項目ごとに6をかけて12で割ります。つまり前期実績の半額です。(100円未満は切り捨て)
ややこしいね
まったくだよ
仮決算に基づく中間申告もできる
また法人税の中間申告は仮決算に基づいた数値で計算をして納付をすることも可能です。
その場合は上半期を1つの事業年度とみなして、法人税額を算出します。
去年は儲かっていたけれど今年は赤字のときなど、キャッシュを確保したいときに使えます。
ただし中間決算といえども納税が絡みますので、年次決算レベルのことをしなければなりません。
決算を税理士に代行している会社は費用を別途請求されることを勘案する必要があります。
法人税の中間申告が年間納税額を上回ると
今期の業績が昨季に比べて著しく悪い場合など、予定納税でおさめた法人税額が今期の納税額を上回った場合は差額は税務署から還付されます。
その場合は還付加算金と呼ばれる利息がつきます。
還付加算金は不課税取引となるので非課税の雑収入として計上するようにしてください。
法人税の仕訳処理:中間申告から決算まで
それでは実際に年次単位での仕訳処理を見ていきます。また税抜経理での経理方式となるので注意してください。
中間申告(納付)での法人税仕訳処理
中間申告での納付時の仕訳はこうなります。
納付による仮払い法人税を計上します。
自分の場合、仮払税金または仮払金で処理をしている子会社もありました。分かりやすくするためには仮払法人税の方がいいでしょう。
四半期、中間決算時の法人税仕訳処理
これに関しては上場していない会社であれば特に計上の必要はないです。
中間決算で法人税を計上する場合は2通りの方法があります。
1つは全く通常の決算とかわることなく、法人税また住民税や事業税を詳細に計算していく方法。
もう1つは税引き前利益に対して、税効果会計適用後の実効税率を乗ずるだけの簡便法です。
決算での法人税仕訳処理
最後に決算処理です。
決算で今期の法人税額を計算します。そして中間申告での納税で足りなかった分を計上します。貸方には未払法人税がきます。
今期の最終的な法人税等の残高が確定します。
中間申告の額が今季全体を上回る場合
昨季に比べ会社の業績が著しく悪くなった場合は、中間申告で納税をした金額が今期の法人税額を上回ることもあります。
その場合は納めすぎた法人税を税務署から返還してもらうことができますので未収入金として計上します。
法人税の確定申告の仕訳
翌期に法人税の確定申告をします。
申告の期間と納付の期限は課税期間の末日の翌日から2月以内(期末から2ヶ月以内)となります。
還付はだいたい申告をしてから1~2ヶ月後
法人税の還付には還付加算金といわれる利息のような金額が上乗せされて支払われます。
上にもあげましたがこの金額分については「受取利息」ではなく非課税の雑収入として上乗せ分を計上するようにしてください。
還付加算金は消費税の不課税取引に該当するからです。
還付されても嬉しくないな
めっちゃ減益やからね
まとめ
前回の「消費税の中間申告と仕訳」に引き続いて今回は法人税の中間申告についてまとめました。
・法人税の中間申告は前事業年度の法人税が20万を超える場合にする必要がある
・中間申告の時期は事業年度開始の日以降6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内
(例:8月末決算なら4月30日)
・法人税中間申告による予定納税は前期実績の半分
・中間申告の納税が今期の実績を超えたら、その分は還付がされる
とりあえずはそんなところを覚えておけばOKです。