今でもまだ彼らとはSkypeでやり取りをしている。
『なんか面白いネトゲない?』
みんなだいたい同じことを思っている。
自分も同じ。それをやめてからは他のネトゲをプレイしたこともあった。でもやっぱりかなわない。
FF11はそれだけ想いに溢れるゲームだった。
楽しかったのかと言われるとよく分からないし、時間を無駄にしたかと訊かれたらそうも思う。
『廃人』
そんな風に言われたこともある。少し当時の事を振り返ってみる。あまり思い返したくもないんだけれど。
どれくらい廃人だったのか
平日は毎日7時間。週末は土日合わせて40時間のプレイをしていた。
それが社会人の僕のプレイスタイル。
・朝5時に起きて2時間の金策(裏という時限エリア)
・会社から帰ればすぐにIN。20時から25時まで。
平日は常に睡眠不足。
土日休みは部屋から出ることはほとんど無かった。食事睡眠風呂、それ以外は全てFFに時間を注いだ。コンビニに飯を買いに行く時間。それすら惜しんで出前をとることもあった。
彼女にも愛想を尽かされた。
PCは2台。
2つのアカウントを同時起動していて(2垢と呼んでいた)もう1台購入して3アカウントにするかを本気で悩んでいた。
何故そこまで廃人になったのか
そこでは僕のいる価値が認められたから。
攻撃、回復、支援。
ジョブバランスはお世辞にも褒められるゲームでは無かったがPTメンバーには個々の役割があり自分が必要とされる感覚を味わうには充分だった。
詩人という支援職をやることが多かったが
・プレイが上手くなれば『詩さんナイス!』と言われ
・詩人はやっぱり"私"さんだね。
そんな風に名前を覚えられていくともうダメだ。辞められない。自分を必要としてくれる場所がここにはあった。
自分の尊厳も保たれた。
プレイ時間に比例して自分の装備も強化されていくその場所。一般のプレーヤーが持っていない装備を持つことで優越感に浸ることが出来た。
今まではその装備を持っていなかったくせに、手にした途端
『〜持ってない奴はコンテンツに来るな』
そんなことを言いだす奴もいる狂った世界だった。
別の見方をすれば、僕らは常に他プレイヤーよりも良い装備でいたいという見栄に支配されていた。
それを求めすぎることで
・正社員の仕事を辞めてバイトになった
・大学に行かなくなった
・主婦としての役割を放置して離婚沙汰に
こんな事はそこまで珍しくなく、特に大学生で留年をした人は多かった。
HNMLS(今でいう廃人ギルド)と呼ばれる集団の中では基本長時間プレイを共にする場合が多く、色恋も何度もあった。
廃人を産み出しやすいゲームシステム
FF11は他にオンラインゲームがあまりなかったという時代背景もあり、難易度が無茶に高くともユーザーはそれから逃げる事ができなかった。
『嫌ならやめてもいいんじゃぞ』
そうNPCに言われて本気で憤りを覚えた人も数多い。ただし結局のところやるしかなかった。
・1つのサーバー(常時5,000人いる世界)に1体しか出ない24〜48時間間隔POPのHNM
・リアル終身刑と呼ばれる程の気の遠くなる武器(ミシックウェポン)
トップレベルの装備は入手難度は高かったものの、その寿命が数年と非常に長いものがおおかった。
"頑張れば(=時間をかければ)報われる。"
そんな風潮がゲームにもかかわらず存在した。
昨今のゲームシステムに多い
・ある程度の装備一式は簡単に入り口部分で手に入る
・少し頑張って一部を揃えればもうエンドコンテンツに行くことは可能。
それとは全く異なる。
廃人と一般人には明確な差があった。
もちろんそれに文句を言う人も当時はいた。しかし結局、装備による足切りをするのはプレーヤー自身なのだ。
また実のところ僕らは差別を望んでいた。初心者中級者とは異なる自分をアピールする場所がいつだって欲しかった。
廃人としてのエピソードや名言
いくつか自分が経験して印象深いものを紹介する。
遊びじゃないぞ
有名なのはカズヤと呼ばれる廃人のネ実への書き込み
・いくらリアル生活が楽しいからってそっちばかり優先すると月日が経ってFF11に戻ってきた時、ヴァナにお前の居場所は無いぞ
・会社のPCにFFをインストールしろ
・仕事はやめろ勿論バイトを含む
実はこれについては若干エアプ(嘘)なんじゃないかと当時噂をしていたりもしたのだけれど、(張り込み中は離席もできたしね)当てはまる部分は多々あって。
実際に言葉に出すわけではないが
『FF=遊びではない』
その感覚は確かに多くのプレーヤーが根っことして抱えていた。
1つの装備の入手権利(ロット権)を巡って人間関係が崩壊することは珍しくなかったし、多くのプレーヤーは事前に攻略の打ち合わせをして定時に集まりプレイした。
30分に満たないコンテンツの為に2時間以上準備するようなことは普通にあった。
ポイントを個人HPで管理するなんていう今では少し黒歴史にすら見えることもよく見かけた。(余談だけどブログじゃない個人HPってほとんど消えたね)
見栄のためだけに理解不能な活動を続けたことも
先ほどあげた"世界に1体しか出ない24〜48時間間隔でPOPするHNM"。このモンスターはとてもレアなアイテムを落とすことで有名だった。
僕の所属したHNMLS(廃人集団)は他集団と争いながら常にそれを交代で見張っていた。
その甲斐もあり、いつしかそのアイテムはメンバー全員が手にする事に。また、そのアイテムは1人1つしか持つこともできないし売ることも出来なかった。(エクレアと呼んでいた)
普通ならめでたくその張り込み活動は終わるとこだ。
でも僕らはその活動を続けたのだ。
他のHNMLSにそのアイテムを取られることによる相対的なレアリティの減少。それを防ぎたかったからだ。
取っては捨てられたレアアイテム。
何の見返りもない24時間の張り込み作業。
しかしこれに文句を言う者が誰もいなかったことが当時の異常さを示している。
僕が廃人を辞めれた理由
それは急速にどこかで冷めるポイントが絶対にある。
自分の場合はPS2で出る最後のディスクと話題になった『アドゥリンの魔境』。その発売を契機に引退することに。(割と後期)
・今までの装備がゴミになったから
・人間関係が嫌になったから
・リアルが忙しくなった
ネトゲを辞める人の理由は様々だったが自分の場合はFF11がFF11たる所以でもあった廃装備によるマウンティング、そして憧れ。
それがこのゲームも大きな時代の流れに沿うことにより薄くなった事に魅力を感じなくなったのだと思う。
そんな連中は他にも多かった。
僕らはネトゲをしていたがみんなで遊ぶことが好きというわけではなかった。寧ろコツコツと1人でマゾな作業を続けることを好んでいた。
しかし装備、またプレイヤースキルを比較するための対象として周りが必要だった。
あの時にいた廃人達はいまどうしているのか
実はまだこのゲーム。メジャーアップデートは終えたもの、細々と運営は続き新コンテンツも更新されている。
"サービス終了したら人生も終了"
そんなふうにも言われた廃人たちだったが結局は自分の足で皆FF11から卒業していったのだ。(中には細々続ける人も)
もちろん皆んな仕事をしているし中には経営者や会計士の資格を取った奴もいる。
また大抵は自分のように他のネトゲ(DQ10やFF14)を触っているが多くがそれも引退している。
いずれも初心者に優しくバランスの取れたゲームだった。しかしだからこそ、その場所に自分の価値を見出せなかった。(意外だけどDQ10の方がFF14より廃仕様だ)
では今は何のゲームをしているのか。
意外に思う方も多いだろうが自分の周りの場合だとソシャゲ。ついでに言うならグラブル。
これにハマる人が多かった。
そのゲームは少し他と変わっていて。
昨今のソシャゲとは違い努力という名のマゾな周回が報われた。脳みそを使わないでいい継続作業が僕らはやはり好きなのだ。
しかし段々とそれも様相をかえてきていて。
最近ツイッターで彼らから聞こえてくる言葉はどうもおかしい。
・自分が引かないうちに誰かが引いてるんじゃないか
・日付け変わってすぐ引かないと当たりがなくなる
ヤバイ。こいつら…早く何とかしないと。
かつては時間を注ぐゲームだったはずが要求されるものがどうも変わってきたようだ。
・Pay to Win
・Time to Win
MMO RPGをする人にとっては馴染みの深い言葉。
どちらがいいかは分からない。
しかし経済を回すという点では前者の方が社会に役立っているようにも思う。
今から10年前にはよく言われていた
『今後もっとネトゲ廃人は増えて大変な事になる』
しかし実際にはそうはならなかった。代わりにソシャゲ廃人が生まれた。
ただ今後は分からない。ソードアートオンラインのようなゲームが出ればいつだって僕はまだ戻る準備が出来ている。
その時僕には決めていることが1つある。
もうネカマプレイはしないということだ。
今はリネレボ2にハマってます。これくっそ面白いんですよ。
・美麗なグラフィックとか
・オープンフィールドとか
まぁそんなものはどうでもよくて、とにかく要塞戦が燃えるし、みなぎる
DLしてもらえればすぐに分かるかと。
コツコツが報われるんだけど長時間プレイも廃課金も必要なくて、すぐにトップ層に追いつけました。
せっかくやるんなら本気で。
やっと長く遊べるゲームと出会えました。
こんなハマったのはパズドラ以来