後輩からLINEが久々に来た。転職の相談だった。
2歳年齢の違う彼女とはよく分からない変な縁でずっとつながっている。
出会ったのは大学の校舎。
その時僕は当時所属していたゴルフのサークルの勧誘という名目で可愛い子にどんどん声をかけていて。
そしてその中でもひときわ輝いているのが彼女だった。
意外と悪くない反応だったけれど彼女はゴルフには興味がなかった。でも僕は彼女をあきらめきれず電話番号を聞き出した。その日のうちにデートの約束をして(二条城の夜桜だっけな)次の週にはもう付き合った。
当時僕には地元に彼女がいたのだがこういったことをしばしば繰り返していた。もっともそれは恨みをかうこともあったけれどあまり気にしていなかった。
大抵は無視すれば良かったし、どれだけの女の子たちとヤレるかをゲームみたいに捉えていた時期だったから。
そういう時があったから今があると思っている。
1ヶ月も経たず僕は振られた。
でも僕は1ヶ月で振られた。そんな経験ははじめて。自分が惨めになるような気がして振られたその日に僕は連絡先を消去した。
当時振られた思い出は7年経った今もまだ心の隅っこに埃をかぶって残っている。
振られてから2年経った後に彼女から連絡が来た
振られてから2年してそんな彼女も就職活動の時期だったのだろうか。社会人になった自分はもう見ることすらほとんどしなかったmixiに彼女からメッセージが来ていた。
内容は就職相談。
1ヶ月もなかった交際期間だったけれど、とてもキュートなルックスに加えて華があった彼女はANAに行きたがっていたことを思い出した。
『JALより制服が可愛いから』
そんな単純な志望理由。僕は唖然としたけれど受かる人はこんなものなのかもしれないと思ったりも。
ずいぶん後からの連絡になってしまったけれどmixiに当たり障りのない返信をかいて送った。そして2年会っていなかった彼女と会うことになった。
2年前の彼女と再会
邪な気持ちがなかったわけでもない。でもただ単純に楽しみだった。
人は振られた人に対して偶像を持つのだろうか。それも自分の都合の良い方に。僕は2年経った彼女の姿を勝手に想い淡い期待をした。
ただ実際に再会をした彼女は確かに美人ではあったが当時に感じた、”人を引きつけて離さないような華”がなくなっていた。
中高生みたいな自我の強さもすっかり消えていて、代わりに分別のある発言をするようになっていた。
それが僕にはとても悲しかった。
彼女は漠然と大手会社を希望していた。
あれだけ行きたがっていたANAはもう受けないと答えた。いったいこの2年の間に彼女に何があったのかはわからない。
とても聞き出せなかった。
彼女には会うべきじゃなかった
確かなことはひとつだけ。
彼女には会うべきじゃなかった。
想い出の中の偶像として、いつまでもあの頃のまま心の中に留めておくべきだった。
想像していた彼女と現実の姿のギャップ。
それを僕はその時間の中で消化することができなかった。行く前に伝えようと準備していたことは全て場違いの事のように思えて、結局大したアドバイスをすることもできなかった。
その後彼女から連絡があった
その後彼女から連絡があった。以前僕に話していたいくつかの大手企業には入ることができなかったが興味のある業界に行くことができたという内容。
当時はリーマンショックから立ち直りを始めた時期でもあったし大手に行けなかったのは仕方ないかなと思った自分。
行きたい業界に行けたのならそれが1番いいことだとも。
それからもたまに連絡は来ていたが僕はもう地元に帰っていたし、あまり返信をしなくなっていたらいつの間にか連絡も途絶えた。
そして5年後の今また彼女から転職相談を受ける
ずいぶんと彼女の存在を忘れていた。どこかで幸せにやってんだろうなぐらい。
彼女は新卒で入った会社を3年で辞めて今は派遣社員として大手企業で働いていた。
・しかしその場所での正社員登用が難しいこと
・自分より仕事ができる人ばかりが周りにいる会社
それ対してすっかり疲れている様子だった。
得意だった英会話の趣味にも興味をなくしていて何に対しても気力がでないとひどく落ち込んでいた。
僕は転職サイトと同時にエージェントを頼ることを勧めた。
君が思う本音の希望となりたい自分を嘘なく彼らに伝えることが遠回りかもしれないけれど君の幸せに繋がるんじゃないかという話をした。
自分をまず理解して自信をつける事が彼女に1番必要だと思った。
自分がエージェントに対して出した条件。
それを言った時彼女はやっと笑ってくれた。
・年収は350万でもいいから残業がなくてプレッシャーを感じない所がいい
・知らない人と話すと疲れるし数字が好きなので経理部門または総務がいい
・休みが120日以上必要、かつ土曜出勤なし
・転勤は絶対に無理
・でもそれなりに名前ある企業行きたい
書いていて少し引くレベル( ´_ゝ`)
電話の中で僕は結婚して子供がいることを伝えた。写真を添えて。
彼女はおめでとうございますとそれを祝福してくれた。
「5年前にあったあの夜、どうして私のこと誘ってくれなかったんですか」と彼女は尋ねた。
隙があったの分かっていたでしょと彼女はお茶目に笑って言う。
僕はなんて答えたらいいか分からなくて言葉を濁して電話を終えた。
最後に
君は僕が想像していたもう1人の君よりもずっとずっと弱い人だったんだろうね。
そして君がまとっていた人を引きつけて離さないような華。
あれは経験しないでもいいような悲しい出来事や悲哀の心とはトレードオフで。
だから誰かが君を守ってあげる必要があったんだ。
7年前のあの時、もっと君に対して誠心誠意向き合っていれば僕も君もきっと違う人生になったんだろうか。それが君にとっても僕にとっても良い結果になったかはわからないけれど。
最近のぼくの毎日は大抵がしょーもないことばかりだけれど楽しい1日を過ごしているよ。実は電話で話した翌日に子供が自分の足で立ったんだ。
今じゃあもうすごい歩きっぷりでさ。
君にもきっとそんな日が来るよ。
いつか春に家族で京都に行くからみんなで会おう。
あの時みた二条城の夜景はきっとそのままだろうから。