早いよなあ上場企業の決算って。3月末締めで4月27日には決算短信だすんだから。連結子会社はどれくらいで個別決算終わらせらって言われるんだろう…
話は変わって、以前任天堂のことをサイバーエージェントにおけるAbemaTV戦略の記事で酷評したけれど、僕はこの『任天堂』という企業が大好きだ。
例えば最近発売したNintendo Switchは子供が舐めたりすることを見越して、舐めると苦みを感じる無害の塗料を塗っていたということで話題になっていた。そういった『目先の利益にはならないような心遣い』を任天堂の製品やサービスを使用していると随所に感じることができる。
また、子供の発育を考えてのエンターテイメント事業に対してこんなに真摯な企業は他にないとも思うし子を持つ親として個人的にそういう経営方針が報われて欲しいなと思う。
しかし今の任天堂については、あくまで本業としている事業の収益については悪戦苦闘をしている様子が報道されたりもしている。
ちょうど一昨日に決算短信が発表されていたので自分なりに今の任天堂が置かれている状況について気になったので調べてみた。
- 任天堂77期(H29年3月期)決算発表!過去10年で最悪の売上高も十分な黒字と盤石の財務体質
- 77期(H29年度3月期)売上高実績報告 セグメント別(昨季との比較)
- 78期(平成30年3月期)連結業績予測と今後の戦略について
- 以上、任天堂77期(2017年3月期)決算発表を見ての感想
任天堂77期(H29年3月期)決算発表!過去10年で最悪の売上高も十分な黒字と盤石の財務体質
まずはどうせなら長い比較がしたいと思い任天堂における10年間の売上高と営業利益を表とした。
任天堂の今期H29年3月決算については数字だけを見るならば、ここ10年において初の売上高5,000億円を下回っていることもあり芳しくない結果に終わったといえそう。
要因としてはやはりスプラトゥーンの売上に続くヒット作がWiiUにおいて生まれなかったことによるWiiUの販売不振、それに伴ってのamiiboの販売不振、加えダウンロード販売による売上が伸びなかったことだと決算短信には書かれてある。
WiiUってゲームキューブを思い起こすよね。決して悪くない名機だったんだ、あれもさ。
また各セグメントのビジネスにおいて、ちょうど過渡期の間に今期決算が挟まれたことも売上高が伸びなかった原因の主な理由。
みんな知っているNintendo Switchは3月3日に発売されたばかりでまだまだ日が浅いし、1億人以上のダウンロードがニュースされたスーパーマリオランについても12月にios版はリリースされたがAndroid版については3月のリリース。買い切り型のコンテンツだから、無料モードをクリアした人がじわじわと購入する可能性も期待できる。
そういった逆風の中で300億円近くの営業利益を残したということは、ある意味来期についての希望をもてるともいえそうな結果ではある。
任天堂の財務体質は盤石であり数百億の赤字では揺るがない
この会社は他の企業とくらべてBS(貸借対照表)が非常に特徴的だなあと見ていて思ったのであえて表には自己資本比率を記載した。
自己資本比率については30%以上であれば健全と言われていて最近の報道だと東証1部平均でも39%程。
その中で任天堂の自己資本比率についてはここ数年常に80%以上という超高水準にある。それは2012年から2014年までの営業利益赤字ベースの時においても変わらない。
さらに言うならば、上の表には記載していないけれど今期における任天堂の1兆5千億近い自己資本についての7割程度恐らく1兆円ほどが金融資産であると去年の数字からも予測できる。
任天堂はswitchにしてもWiiUにしてもゲーム機の製造を自ら行っていない。大抵は中国企業やSHARPを買収した鴻海などの台湾企業に製造委託をしている。コストはかかるが工場を持たなくてよいため撤退もしやすい。
Panasonicの尼崎工場、SHARPの堺工場。需要を失ってもあり続ける工場という存在が企業の意思決定に大きなリスクを与えることはこれらの例で証明済み。
浮き沈みの激しい業界だからこそキャッシュを多く持って将来の不安とチャンスに備えるという考えは、保守的で効率は良くない面はあるもののどこか理にかなっているともいえる。
正直なところこれだけの金融資産を抱えていると本業における数百億程度の利益や赤字について、超長期的な継続を含まない限りはあまり影響を与えないとまでいうことができそうだ。
77期(H29年度3月期)売上高実績報告 セグメント別(昨季との比較)
次に各セグメントにおいての売上内訳を2017年度3月期と昨期とでざっくりとした円グラフを作成して比較してみた。
ハード・ソフトにおける売上高の内訳が4%ほど下がっていて、代わりにスマートデバイスビジネスについての売上高が占めていることがわかる。それらについてを少し見ていく。
ゲーム専用機ビジネス部門の状況(ハード・ソフト・アクセサリを含む)
まずはNintendo Switch。
3月3日に発売された同機種は予想以上の好調な売れ行きを示しているようで3月末までに世界での販売台数は274万台となった。特に北米では90万台以上が売れ任天堂ハードの発売月販売数としては過去最高を記録。世界累計発売台数5,000万台を超えたPS4に対して十分の存在感を示したといえそうだ。
また同時発売タイトルとしての『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』の評価が高いこともswitch本体の販売の牽引につながったと任天堂はみている。
次にニンテンドー3DS。
2011年に販売されたニンテンドー3DSについてはゆるやかに販売台数は落ちていたのだが77期については昨期を上回る結果となった。主な理由についてはやはり『ポケモンGO』。これによってポケモンを知った人も多く、同時期に発売された『ポケットモンスターサン・ムーン』がシナジー効果となり3DSと共に販売が加速した。
またニンテンドー2DSについての販売も値段の安さもあり好調でありソフト売上も伸びていることからまだまだ任天堂はこのプラットフォームについては事業を継続していく考えがわかる。
最後にWiiUについて。
WiiUについては確かに昨期スプラトゥーンの大ヒットもあり躍進をした。しかし正直なところ任天堂はその時点である程度このハードを見限っていたんだろうなということが、去年における販売数量予想を80万台としていた時点でわかる。案の定77期はWiiUでミリオンを超えたソフトは1本のみであり且つswitchとの同時発売である『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』。
SwitchをWiiUの後継機として捕らえてもうWiiUについてはDQ10専用機としよう。それならまだまだ十二分に価値はある( ゚Д゚)
追加、その他部分について
この部分は主にamiiboの売上が含まれている。それについてもやはり昨期についてはスプラトゥーンのamiiboが国内、またフィギュア人気が日本よりも高い北米を中心に売れた。しかしWiiUソフトのヒット作のない77期についてはamiiboも売れる要因がなく順調に落ちた格好だ。
スマートデバイスビジネス部門の状況(課金収入・ロイヤリティ収入)
この部門については77期に大きく躍進があったといえるし夢も膨らむ。
スーパーマリオランについてはios版が12月、Android版が3月に配信を開始したばかり。何より任天堂初の課金ガチャシステムを搭載した『ファイアーエムブレムヒーローズ』は2月からの配信。しかし77期の一部期間にしか影響を与えていないにもかかわらず約200億円もの売り上げ増加があった。
mixiはモンストのみで約2,000億円の売上高をあげていると考えるとこの分野に本気を出した任天堂がどこまで売上を伸ばせるかは想像のつかないところにある。
ポケモンGOの売上寄与について
また、この売上高の中にはポケモンGOの売上高はもちろん、ライセンス料の収入についてもどちらも入っていないので安心してほしい。
ご存知の通りアメリカの会社Nianticによる『ポケモンGO』は世界中で爆発的なヒットを記録した。しかしそのアプリでのポケモンに対するライセンス料については任天堂の持分法適用会社である株式会社ポケモンが権利保有者であり対価を受け取る。よって任天堂の営業利益には直接の結びつきがなく経常利益段階で初めて反映される。
任天堂の77期については約200億円ほどの経常利益が昨季より増加したことを考えると同社は株式会社ポケモンの株式を32%保有することから逆算して。。。
ポケモンGOにおけるライセンス料や協力費用などによって株式会社ポケモンが得た最終的な営業利益はだいたい600億円ほどあると僕は考えるのだろうがどうだろうか。
以上セグメント別の77期と昨季における売上比較。
78期(平成30年3月期)連結業績予測と今後の戦略について
77期についには売上高5,000億を下回った任天堂だが来期については過去5年間(更に言うならばある程度ヒットを記録した3DS発売から)1度も達成していない売上高7,500億円という業績予測を立てている。今までの決算書を見るに任天堂という会社はできないと考えている目標を無闇に公開するほど無鉄砲な会社ではない。
それでは一体これからどういった戦略で2,500億円もの売上高の増加を見込んでいるのかを見てみる。
ゲーム専用機ビジネス部門の展望
まずはNintndo Switch。
2018年の3月末までに累計1,270万台の出荷を目標としている。(年度1,000万台出荷)そしてその普及の勢いとなるのが新規タイトルの発売。すでに2017年中に発売の発表されているタイトルが以下ソフト群となる。
スプラトゥーン2については試遊会での評価も上々。現WiiUユーザーにとって購入のきっかけとなる一番のタイトルであることに間違いはない。
ただし、個人的にはやっぱりゼノブレイド2。
前作であるゼノブレイドはWiiで発売され抜群の評価を受けた知る人ぞ知る名作RPG。中古についても出回ることが少ないため数年たっても高額のままだったほどの、まさに神ゲー。
クロスについてはやや残念だったが今回は一応据え置き機として位置づけられるSwitchでの発売に加えて前作のナンバリングを引き継いでいる。RPG好きには無縁と思われたSwitchにこのタイトルが加わることは同時に『ゼノブレイド2』という1本のRPG、それだけの為にSwitchを買わざるを得ない僕のような人が発生することを意味する。
ひどい話だ(/・ω・)/
その他にも今年発売予定のソフトメーカータイトルにDQ10やスカイリムなど多くの有名タイトルが加わっており任天堂の本気さが伝わる。
次に3DSについて。
任天堂は3DSとSwitchについて棲み分けを行いビジネスを平行させていくことを目標としている。確かにどちらも携帯できるという点で一方があれば一方はいらないとなってしまうことは任天堂にとって恐るべき事態だろうな。
ハードについてもNewニンテンドー2DS LLなど新しいラインナップをまた用意して求めやすい価格とすることで更に国内・国外を問わず普及をさせようと考えている。
ファイアーエムブレムやカービィなどの新規タイトルの継続も投入していくがやはりソフトの目玉はDQ11。PS4との戦いでどちらが制するのかは個人的に楽しみだ。(どっちにしようかな、、)
スマートデバイスビジネス部門の展望
まだ、具体的な発表はしないが
・任天堂IPに触れる人口の最大化
・スマートデバイス事業単体での収益化
・ゲーム専用機事業との相乗効果
これらに焦点をあてて引き続き取り組みを行っていく。
そしてまだタイトルは話せないが
年に2~3タイトル程度を継続的にリリースしていく
とのこと。
やばい超楽しみ。むしろここ一番大事だと思う!!タイトル教えてほしい!!
そろそろこの部門をもっと本格的に進めてほしいと思いながらも任天堂にはゲーム会社唯一の良心であってほしいという希望もあったりする。
以上、任天堂77期(2017年3月期)決算発表を見ての感想
冒頭にも戻るけれど僕は任天堂が大好きだ。そうでもなければ大口株主でもないのにわざわざここまで調べたりなんてしない。
今思えば物心ついたときの電池を4つも入れるゲームボーイから始まり、Wii、3DSに至るまで、ほとんど任天堂の発売したハードについては購入してきたなと思う。
新しいハードやソフトを買って電源を入れるまでの間の高揚感。待ちきれず親の車の中で開けて怒られた思い出。大人になってもこれらは色あせることなく僕の心に根付いている。
任天堂にはこれからもそういった心躍るわくわくを子供たちに与えていって欲しいなと僕は思う。
また、日本が世界に対して誇ることができる分野はどんどん減っていってしまった昨今において任天堂のゲーム事業については数少ないその世界と対等以上にわたりあっていける事業だと僕は思っている。
そういった意味でもこの国自体にまだワクワクを持たせてくれるグローバル企業へと任天堂にはなってほしいと大人になった僕は思うんだ。
書いていたらどんどんNintndo Switchが欲しくなったのは言うまでもない。
欲しいものリストを追加しておきました( *´艸`)